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Chapter.21 〜王者の誇り〜
まさに完成されたHAPPY 47GTに、ライバルは存在しない

 世間が花見の話題に盛り上がり始める3月末は、毎年レース業界にとってみれば呑気にしていられない時期である。全日本GT選手権をはじめスーパー耐久シリーズなど、各レースカテゴリーのシーズンインがこの時期に集中している。それだけに我々の業界においては、ライバル・チームの噂など、世間とは異なるレースの会話に花を咲かせ盛り上がることが多い。
 しかしながら今年については、シーズン・インを目前にしてもレースの話題に触れる機会が少なかった。米英とイラクの戦争に世界が大騒ぎする最中ともあり、業界関係者とのトークもその話題に占領されていた。今回の戦争では、多くのメディア網から情報をリアルに知ることができるため、誰もが軍事評論家のように、当事国に対する個人的な感情をあらわにしていた。
 ボクはというと、会話の視点が人と少しずれていた。というのも、仕事で関わっているアメリカのレースに対しても戦争は悪影響を与えているからだ。そのレースとは全米で大ブレーク中のストックカーレース、NASCARウィンストンカップ・シリーズである。
 知っての通りNASCARは、メジャーリーグやナショナルバスケットよりもアメリカではテレビ視聴率が高く、スポーツイベントとしてはフットボールにつぐ第2位の人気を得ている。そのレースは全米に点在する16か所のレーストラックで毎週末にわたり開催され、年間にするとその数36戦。開催数はF1のほぼ倍であり、観客数も毎回20万人近く集める人気ぶりだ。いわばこのレースに携われるスタッフは、ドライバーのみならずメカニックにとっても栄誉ある仕事といっていい。
 しかし今回の戦争は、頂点に上り詰めた彼等の努力を無にしてしまう可能性がある。実際、知り合いのレーシングチームでは、優秀なメカニックが戦地に予備兵として徴兵され、レース業界から強引に連れ去られてしまった。さらに戦争が引き金となり、スポンサーがレース参戦を断念したために走れなくなるドライバーも中にはいる。
 もしも・・・、それが自分の身に起きたとして、シートから引きずり降ろされたとすれば、どーだろう?
 夢だけではなく、命までも奪われかねない話だ。ド派手な戦闘などを行わずに、もっともスマートな解決策はないのだろうか。ともあれ、戦争の被害を受けたレース関係者の気持ちを考えると、何だかヤリ切れない心境である。

 3月30日、マイスターカップの開幕戦を迎えたわけだが、好きでもレースが行えない人が居ると思うと、無事にシートに座れサーキットを走れることは幸運に他ならない。いつになく感謝の気持ちに満たされた、今年のシーズンインである。
 ただ、思わしくない状況がマイスターカップにも襲いかかっていたことには力を落とした。おそらく他のレース関係者も同じ心境を共にしたはず。それは、賑わいがみられないエントリー台数。そもそも開幕戦は例年エントリー台数が少ない傾向にあるが、今年の場合は状況がより悪化。いつもなら12台のエントリーは見込めたが、実際は8台に止まってしまったのである。このレースの行く末はいかに・・、と心配する人も少なくなかったはずだ。
 さらに寂しい話題がもうひとつあった。最大のライバル、位高選手のジネッタG12が今年度は欠場するとのニュースだ。彼はマイスターカップを切っ掛けに本格的なレース参戦に目覚め、今年は全日本GT選手権と、フォーミュラーの登竜門といわれるF4にフル・チャレンジする。マイスター・ドライバーが大舞台に旅立つことは嬉しいことだが、そもそも少ないライバルがさらに減っては、張り合いを失った気持ちも正直いって感じた。

 ジネッタG12の欠場により、47GTライバルは3台。常連であるアート7、そしてアート23Bといったフォーミュラーのシャーシを持つ2台が、2003年の天敵ということだ。ただ、アートチームはこの2台のドライバーを今年から変更した。アート7は昨年の五味選手に替え、大山選手が復活。五味選手は、愛車のセブンで200クラスに舞台を戻した。
 もう一台のアート23Bは、いままでの武蔵野選手からバトンを渡された初参加のニューフェイス、名前はたしろじゅん選手。聞くところによると彼は、カテゴリーはわからないが、富士フレッシュマンにおいてチャンピオンを経験したことのあるキャリア持ちらしい。いわば注目株である。
 実際そのキャリアを証明するかのように、今回のレースでは彼がライバルとして一気に急浮上。予選ではポールポジションを奪った47GTに対して、コンマ1秒も遅れない走りで追従しフロントローのスタートラインについたのである。マシントラブルのためアート7がポジションダウンしたこともあり、この開幕戦を制するのは、47GTか、それともアート23Bか、2台のどちらかに絞られることになった。
 バトル相手が見知らぬドライバーというのは、長年レースをやってきてもそれなりに緊張する条件。いったいどんなクセを持つのか、まったく前データを持ち得ないでバトルすることになる。ようするに相手を見抜くにはゴールまでの時間しか許される、その少ないチャンスで戦略を練るしかないのだ。つまり走り出すまでは、どうこう考えてもしかたないのである。そうした状況からか、今回は相手の出方を探る上で必要な冷静を維持しつつ、スタートのシグナルを迎えることになった。
 スタートでは、まず47GTが先行。6500rpmからのクラッチミートは手前味噌になるが無駄がなく、見事にロケットダッシュが決まり1コーナーを先取した。しかしながら、アート23Bのポテンシャルは47GTに迫る。やすやすと、ぶっちぎり体制を許すわけがなく、スタート直後に一車進ほど離れたものの2周目にはピタリと背後まで迫り、いつバトルを仕掛けてもおかしくない状況が訪れた。
 その際のラップタイムは、どちらも予選と変わらない57秒なかば。ド迫力のバトルが、のっけから始まったわけだ。おそらく観客の多くが、その接近戦がゴールまで続くと期待したことだろう。
 しかし、スタートから4周目に入った1ヘアピンで、状況は動いた。接触ぎりぎりまで47GTの背後に付けていたアート23Bが、ヘアピンの立ち上がりで出遅れを見せたのである。原因はわからないが、その後、ダンロップ、80Rを通り過ぎ第2ヘアピンを抜けた時には三車進ほど47GTがリードを奪っていた。エンジントラブルか、それともミッションの何かか・・・?アート23Bを何かが襲ったことは確かだった。
 47GTはといえば、オフシーズンに大きな変更を加えたわけではないが57秒代で安定したラップタイムを刻む優れた信頼性能を発揮していた。今回はダイナモ&バッテリーを取り外す軽量化を施し、ブレーキまわりを変更するといったアレンジを行っているが、違和感なくドライビングできるところをみると、どれも効果的なスパイスといえる仕様変更といえるだろう。
 それほど快調につっ走る47GTだけに、レース後半は我々のペースとなった。タイヤがタレはじめても57秒台のタイムを維持する47GTは、アート23Bとの差をさらにジリジリと広げ、気付けばストレート1本分までリードを稼ぐ。アート23Bとしても57秒代までペースを戻していたが、その追撃を許さず、最終的には47GTが圧倒的な逃げ切り劇でマイスター開幕戦の王者を勝ち取った。
 昨年の最終戦でマークした56秒代の自己ベストは、47GTの完成を意味した。追従を狙うライバルも封じこめ、いまは王道を歩んでいる。それだけに言い換えれば、今年は目標がまだ定まってはいない。55秒代のタイム獲得に目標をしぼりチャレンジを行うべきか、それとも新たなるライバルを待つのか?
 ともあれ王者ゆえの嬉しい悩みはつきない。

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