HAPPY CARSABOUT "HAPPY"INFORMATIONPRODUCTSFOR SALECOLUMNLINKSTOP


COLUMN
BACK CONTENTS NEXT

Chapter.23 〜最速の証明〜
シーズン土壇場で果たした公約、エリーゼ最初の1分切りを達成

1分切り!47GTの開発を終えたHAPPYが、エリーゼによる筑波サーキット最速チャレンジを新たに始めたことは承知と思うが、その計画でまず目標として掲げたのが「1分切り」というわけだ。筑波を知る人なら理解が速いだろうが、筑波2000においてそのタイムをたたき出すのはそう簡単な話ではない。事実、1分を切るマシンは数が知れており、多くのチューナーが達成できぬまま挫折していることも少なくない。もっともエリーゼのチューンモデルを見回しても、今だ1分の壁を破ったものは1台もない現状だ。
 1分切りがどれほどに至難の領域かは、某自動車雑誌が開催している、筑波スーパーバトルを紹介すれば、より理解が深まるだろう。オーバー400馬力を誇るランエボのようなモンスター4WDでさえ、その妙技を成し遂げられるマシンは数少ない。サスペンションやブレーキ、そしてドライバーとのリズムが完璧にマッチングしたものが、1分を切ることが許されている。ただし、それらの殆どはターボチューンによる記録。つまり、HAPPYエリーゼのようなNAチューンにとっては、かなり難易度の高いチャレンジなのである。
 HAPPYもその難易度を知りつつも、チャレンジスピリットを一時も曲げることはなかった。むしろ計画は着実に遂行されるばかりなほど。まずボディのフルカーボン採用による軽量化にはじまり、ブレーキシステムのグレードアップ。そしてエンジンへと、アスリートの筋肉が強化されていくように、全体の性能バランスを絶妙に図りつつ、1分切りの準備が慎重に進められていったことは、以前にも報告した通りである。 その筑波最速エリーゼの開発が進むさなか、おそらく夏も終わりに近づいた頃だったろうか。斉藤社長から一本の電話が入った。その話の内容はこうだ。
「はやいとこ、1分切りの記録を出しちゃいましょ。他がやっちゃうまえに…」。その口調は穏やかだったが、他ならぬ自信をも伺わせる印象を抱いたことを今でも鮮明に覚えている。しかも、そのチャレンジとなる日程もすでに決められており、エリーゼ・スーパーテック2005年の筑波最終戦であることが、会話の最後の言葉として残されたのである。
 電話口で感じ取った、斉藤社長のあの確固たる自信が何であるかは、スーパーテックを2週間後にひかえ行なった事前テストのときに知ることになった。HAPPYエリーゼが走行前の暖気を始めるまで気付かなかったが、マフラーから放たれる排気音そして排圧がこれまでとはまったく違っていたのだ。エリーゼとは久しぶりの再会だったとはいえ、一段とパワーに満ちたその排気サウンドは、早朝のダレたボクの身体にも、さすがに明確な変化として伝わったのである。
 すでにお気づきだろうが、エンジンはより高性能なものにスイッチされていたわけだ。搭載されたエンジンはKシリーズ2.0L。吸入方式はこれまでのキャブからインジェクションとなっており、それによる最高出力は230psを誇るユニットだ。トルク特性を聞けば、パワーバンドが広く、小さいコーナーが多い筑波サーキットにおいては、コーナー脱出スピードを稼げるだけに、かなりの戦闘力を期待できる内容でもある。これほどのパワーユニットであれば、確かに、1分切りを実行したいという斉藤社長の気持ちもわからなくはないのである。
 この日はエンジンのシェイクダウンでもあったが、さすがにその排気サウンドを耳にしてしまっていただけに、はやる気持ちを抑えきれず、コースイン直後からスロットルをフラットアウトに。その瞬間、新しいエンジンが予想を遥かに越える性能であったことを知らされる。中回転域には強烈なトルクが存在しており、軽い気持ちでステアリングを握っていては振り回される性能と言っていい。したがって、230サイズのSタイヤをホイールスピンさせるなどたやすいこと。コーナーではより繊細なアクセルワークが求められるほど、ズ太いトルクを一気に立ち上げる過激さである。
 さらに豪快なのが高回転域だ。シェイクダウンともあり燃調が少し濃いめの感があり、未完成なコンディションとはいえ、中回転域で上り詰めたトルクが高回転域まで持続していく、あきれたパワフルさをみせるほど。レブリミットまであっという間に吹け上がってしまう特性ともあり、ドライバーには一瞬の余裕も与えない加速が終止展開されるわけだ。したがって、フルスロットルで駆け抜けるS字コーナーなどはこれまでにない別次元のスピード感であり、バックストレートにしてもいつも以上に緊張感にかられるほど、新ユニットはHAPPYエリーゼを大幅に進化させていたのである。
 ただ、過激に吹け上がるパワフル性能ではあるが、シフト操作に手を焼くことがないよう、シーケンシャルミッションがドライバーをサポートしてくれる魅力がHAPPYエリーゼにはある。6速までクロスレシオとなるそれは、各ギアでの加速時間がとにかく短く唖然とさせられるが、シフトアップはレバーを手前に引くだけの操作でことが足り、しかもクラッチを踏まずにアクセルを合わせれば変速できるだけに、コーナーリング中のシフトアップも難なくこなせてしまえる良さがある。しかもシフトアップ時のタイムロスを極端に削り取れることも、最速エリーゼをめざすには有り難い武器だ。さらにコーナーの進入でも、ブレーキ性能の高いHAPPYエリーゼはブレーキポイントがかなり奥になるため、一気にシフトダウンできるというもの、ステアリングワークにより余裕を得ることができ、レーシングスピード域では実に頼りになる相棒となっている。
 しかしながら、この日の事前テストでは嬉しい話題ばかりではなかった。正直なところ、強力になったエンジンパワーを生かしきれない問題点が出てしまったのである。コーナー立ち上がりで以前に見せていたリアタイヤのジャダによるトラクション不足は、フレーム剛性を高める特製品の補強バーを装着したことで解決に向かったが、今度は強めのオーバーステア特性にアクセルを思い通りに踏み込めない状況に陥ってしまったのだ。それだけにタイムに影響をおよぼしやすい最終コーナーの立ち上がりなどで、思いのほかリアがドリフト気味になり強力なトラクションをかけられない傾向である。
 おそらくLSDを1.5WEYに変更しイニシャルが強くなった影響もあるが、そのすっきりしないリアスタビリティは、1分切り!にチャレンジする上で不安な要素となっていたことは確か。冷えた路面で数周のタイヤの暖気をおこない、1分切りのアタックに入るといった条件としては、ドライバーにとってみれば少しも余裕は持てない条件となっていた。
 しかし熟成の余地を残す足回りではあったが、エリーゼ・スーパーテック最終戦でみせるHAPPYエリーゼの走りは、2005年度の開発時間が実りあるものであったことを証明してくれたといっていい。1分切りを果たすべく意気込んで向かった予選アタックは、神経質なアクセルワークを必要とされたものの、やはりパワーアップしたエンジン性能の効果は大きく、タイヤの暖気をしている段階から1分1秒台のタイムを記録。この段階で確信したともいえるが、フルアタックをかけた次のラップでは、いよいよエリーゼでは前人未到となる59秒台の世界へ侵略を果たすことにな成功したのである。この記録には、1分切りを待ちかねていた他のライバルチームも祝いの言葉をかけてくれるなど、エリーゼの可能性の高さに関係者が喜びを隠せなかったことは言うまでもないだろう。
 我がチームはシーズン最後のラストチャンスで見事に目標を現実のものにしたわけだが、実はその最速記録と引き換えに、ウエットレースとなった決勝では課題を突き付けられることにもなった。その課題とは、やはり足回り。トラクションが不足気味のリアサスペンションは、想像できるようにアクセルワークをよりシビアにしてしまうわけだ。それだけにHAPPYの手に成るマシンがどれもそうであるように、モンスター性能を自在に操れる、人馬一体の特性を確保することが、今後の課題になるだろう。つまり、47GTが持ち味にしていたバトルに強い優れたコントロール性を、エリーゼにも追求していくつもりである。それが現実のものになったときには、記録が確実に塗り替えられることは間違いない。もちろんその瞬間が、そう遠い日でないことも間違いないないだろう。

BACK CONTENTS NEXT




HAPPY CARS I ABOUT "HAPPY" I INFORMATION I PRODUCTS I FOR SALE I COLUMN I LINKS I TOP