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Chapter.19 〜HEAVEN AND HELL〜
ワイドトレッド化の効果はいささか… シリーズランキングは逆転され2位に後退

 2002年度のマイスターカップも、早いもので今回の第4戦を含め残り2レースのみとなった。前回のレースでエンジントラブルによりリタイヤを余儀無くされた我がチームは、シリーズランキングにおいて#19、位高敬選手に同ポイントまで追い付かれ、いまやアドバンテージはない。つまりチャンピオン獲得にこの第3戦は、大きな意味をもつ舞台となった。
 強者47GTにとって稀な状況だが、このピンチをかわすべく、今回ばかりは入念な準備を進めた。夏場が過ぎ気温も涼しくなった9月ということもあり、#19のジネッタは、おそらく自己ベストである56秒台の予選タイムを出す予測もできる。そう考えれば、我がチームは47GTの改良を実行せずにいられなかった。
 改良の大きなテーマは、フロントサスペンションのワイドトレッド化。47GTは以前よりコーナーでのアンダーステアに悩まされており、たとえばステアリングを切り込むスピードに対して、旋回のスピードが少し遅れる傾向にある。自動車雑誌風に言えば、「応答性にリニア感がない」という表現であり、それが影響して、コーナーリングスピードを稼ぎにくいコンディションといえる。そこでメカニックと相談したところ、手探りにはなるが、フロントサスペンションのワイドトレッド化を計画したのである。
 レース当日まで時間に余裕がないことから、ワイドトレッド化するための手法としては、新たに製作することはあきらめ、既存のサスペンションアームを延長するのみにとどまった。サスペンションアームがフレームに接続する部分を延長し、ピロボールによって固定するという方法だ。これにより片側を5センチずつ、計10センチにおよぶワイドトレッド化を図ったのである。
 また、この改良に合わせフロントフェンダーもワイド化を施され、オリジナルのイメージを維持しつつ、新たにボディラインが作りなおされた。
 気になるのはその効果だが、これが意外にも応答性能を大幅に成長させる決定打とはならなかった。違いがみられるのは、コーナーリング中における、フロントのロール量が増えたこと。その影響で、以前に比べリアタイヤが滑りやすくなるオーバー傾向が強くなった。本来はフロントタイヤのシャープな応答性を期待する改良だったが、そちらへの効果は、いささか成長が控えめである。
 結果的に、走りのフィーリングは少しジャジャ馬の性格があらわれた感じだ。以前に比べリアタイヤが滑りやすくなったその特性は、ヘアピンから高速コーナーまで、あらゆる場面で顔を出すため、本来アクセル全開で駆け抜けられたところも加速に慎重さが必要となり、思い切りの良い走りに持ち込むのが難しいほど。とはいえ、コーナーリングスピード自体は以前よりも向上しているのはメリットが大きい。リアタイヤが滑りやすいオーバー傾向になったものの、コーナー進入スピードはワンランク上がっている。その意味では、今回の改良は無駄に終わってない。あとは、シャープな応答性を追求すれば、かなり戦闘力も高まる現状といえる。
 47GTの走り性能がひと皮剥けた、その成長ぶりは、予選のタイムからもうかがえる。記録したタイムは57秒7。自己ベストに少し届かない数字だが、ただ、今回のエンジンは過去に使用していた臨時のBDGである。すなわち、いつも搭載しているYBに比べポテンシャルは控えめのエンジンを採用しながら、自己ベストにあと一歩というタイムを記録できたことは、シャシー性能の向上を充分に果たしているわけだ。本来のYBを搭載していたとすれば、56秒台とまではいわないが、自己ベストタイムの更新は期待できたかも知れない。タラレバ…、ですが。
 結果的に予選を2位で通過し、決勝はフロントローからのスタートとなった。ポールポジションは、またもや宿敵#19ジネッタの位高選手。予測とおり56秒台のタイムを出し、我々はコンマ8秒のアドバンテージを付けられた。このタイム差では、まともに立ち向っても勝利が得にくいことは、説明するまでもないだろう。あとは、位高選手がプレッシャーに弱い性格を期待して、前回のようにスタートミスを待つ作戦しかない。…と思ったが、ここはダメ元で、待たずにミスを誘発するよう仕向ける作戦に出ることにした。
 その作戦とは、題して「心理作戦」。大して難しいことではなく、単に言葉で、さりげなくプレッシャーをかける方法だ。たとえば「最終コーナーの飛び込みで刺しまっせ〜」とか、「ブレーキがやばいですから、ぶつかったら堪忍してね」とか、簡単には勝たせない意思を強引に与え続けるのだ。一見して安易な作戦に思えるが、これも、レース界ではまかり通っている立派な作戦。人によってはスタート前に自分のクルマを蹴っ飛ばすことで、周囲には「頭の切れたヤバイやつ、近付いたらぶつけられるかも」てきな作戦で、優勝を勝ちとった話もあるほど。だから、これが意外に効果あるため、今回は実験したまでなのである。(位高選手ごめんちゃい)
 目論みとおり、決勝ではその効果が少しあらわれた。スタートは#19に絶好のクラッチミートを決められ、1コーナーを2番手で通過するが、序盤の#19の走行ペースは上がらず、コーナーではミスが連発。本来ならコンマ8秒のアドバンテージを持つため一気に離されるはずだが、47GTはピッタリと背後に付ける展開に持ち込めたのだ。1コーナーから第2コーナーまでのインフィールドで離されることもなければ、バックストレートから最終コーナーの高速区間でもバッチリ追従していたのだ。ライバルの走りからは焦りを感じてペースが上がらない、そんな心境が序盤にみられたわけである。しかし…。
 「よっしゃ、こりゃいける!」そう期待感に酔えたのはつかの間だった。プレッシャーに強くなったのか、#19は徐々にリズムを取り戻して走りに無駄がなくなりはじめた。47GTは決勝ラップとして速い58秒をコンスタントに出しているにもかかわらず、その差がしだいに離れて行く状況に変化したのだ。つまり、例の「心理作戦」が効果的に働いたのは序盤まで。最終的に2秒6の距離差まで広げられ、2位のポジションは変わらぬまま決勝を終えることになった。
 これでシリーズランキングは逆転。残る最終戦で優勝しなければ、#19にチャンピオンの座を譲らなければならない状況に追い込まれたわけだ。それを阻止するには、やはり47GTのさらなる改良は避けられない。現段階で望むのは、フロントのアライメント調整の自由度を広げること。そのことでフロントの旋回性能をよりシャープに成長させ、コーナーリングスピードを稼げるようになれば、56秒台のタイムは難しい話ではない。それが実現すれば、まさに47GTは無敵だ。このまま、宿敵#19ジネッタに先を走られて黙ってはいられないのだ。撃沈する日が楽しみである。

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